アキレス腱が痛くなったら何をすべきか?(パート1)

2019年02月05日(火)10:20 PM

アキレス腱障害はランニングに起因する三大障害のうちの一つですが、痛みがなかなか引かないために苦労する障害の一つでもあります。

 

 

この記事ではアメリカ理学療法学会のガイドライン(2018年)を元にアキレス腱障害についてご紹介します。

 

  1. 障害に至るメカニズム
  2. リスク要因
  3. アキレス腱障害になったら
  4. 介入方法

 

 

1. なぜなるのか?(パソメカニクス) 

 

実は痛みが出る前に、機械的なストレス(張力やせん断力)がアキレス腱の病理的な変化を引き起こすようです。この病的なプロセスと関連する腱の変化が、機械的また材質的な性質を弱らせてしまい、腱の硬さや力の低下を招き、非効率的な力の伝達を生み、したがって中枢神経系による運動コントロールにも影響を与えてしまうのです。

 

アキレス腱障害によって神経系は、神経の成長不全、神経痛み伝達物質の感度増加、受容器の活性化などの反応を示し、これらの変化によって中枢への痛みの情報伝達通路が活性化して、痛みの感じ方を変えてしまう原因になるそうです。

 

 

2. どんな人がなりやすいのか?(リスク要因)

 

リスクには内的要因と外的要因があります。内的要因としては、

 

足首の背屈制限

距骨下関節の可動域異常

足首の底屈低下

プロネーション増加

腱の構造異常

肥満

高血圧

脂質異常症

糖尿病

全身性疾患

受傷歴

大臀筋、大腿直筋、前脛骨筋、外側腓腹筋、下腿三頭筋の神経筋コントロール不全

股関節、膝や足首のモーメントの変異

股関節のバイオメカニスの変異

下肢のスティフネス増加

バランス不全

下肢のキネマティクスの異常

 

外的要因としては、

 

トレーニングエラー

環境要因

欠陥のある道具

シューズ

グランドの表面

運動/スポーツ参加

 

などが上げられるようです。足首の背屈制限は足部関連障害すべての原因と言われているくらいですので、アーチが下がるプロネーションタイプの人も、アーチの高いタイプの人も、どちらもリスクはあるということです。足首の捻挫も背屈制限につながりやすいので、捻挫経験ある人は要注意です。

 

 

3. アキレス腱障害になったらどうなる?(クリニカルコース)

 

  1. エリートサッカー選手でアキレス腱障害で休むのは比較的少ない(中央値10日、平均23日)。しかし、再発率は高く(27%)、10日以下しか休んでいない選手は再受傷リスクが高かった。重度のアキレス腱障害(28日以上不参加)選手のうち、38%は手術が必要になった。
  2. ランナーに対する研究では、回復まで中央値で82日、最短で21日、最長で479日かかった。
  3. 12週間の伸張性収縮トレーニングを受けた後では、女性のほうがより痛みを感じていて、あまり機能の回復を感じていなかった。
  4. 3ヶ月間のふくらはぎへの高重量の伸張性収縮トレーニングをおこなった人への追跡調査をおこなったが、約5年後におこなった調査では長期的なよい成果が得られている。
  5. NBAの調査では、アキレス腱障害とパフォーマンスの低下との関連性が示された。若い選手において、試合への復帰ができることが多いようである。

 

など、けっこう質の高いエビデンスが示されているようです。イメージとしては治るのに時間がかかると思っていたのですが、治るのが早い人は早いのでしょう。

 

 

4. 治すには何をしたらよいのか?(介入方法)

 

アキレス腱障害に対する治療介入として様々なものが挙げられていますが、オススメとそうでないものとあるようです。

 

この表は推薦度合を示していますが、

 

A:強いエビデンス(レベル1か2)

B:中程度のエビデンス(レベル2)

C:弱いエビデンス(レベル2~4)

D:相反するエビデンスの混在

E:理論的エビデンス

F:専門家の意見

 

というわけ方になっています。Fだからダメということはないと思いますが、参考にしてください。

 

エクササイズ(A)

別ページ参照

 

ストレッチング(C

クリニシャンは足首底屈筋群のストレッチを膝伸展位と屈曲位で行うべきである。

 

神経筋再教育(F

アキレス腱障害の患者は下肢の筋活動が低いパターンがあると判明した。しかし、その低下した筋活動がアキレス腱障害の原因なのか結果なのか、またこれをターゲットにした介入が効果を示したのかは不透明である。

 

マニュアルセラピー(F

関節モビリゼーション、軟部組織モビリゼーションは採用してもよいのではないか。

 

患者への教育:行動の変容(B

急性でないアキレス腱障害患者に対しては完全に休むことは示されておらず、リハビリ参加に耐えられる程度のレクリエーション的な活動には続けて良いとアドバイスすべきとしている。

 

ヒールリフト(D

相反するエビデンスが存在しており、ヒールリフト(靴の中に入れて踵を持ち上げるもの)を使用するように推薦するものはない。

 

ナイトスプリント(C

ナイトスプリントは使用すべきではない。システマティックレビューによると、伸張性収縮エクササイズとナイトスプリントの併用に関して相反する結果が見られる。研究のまとめたもの(プールドメタ解析)でも追加的な改善は見られないと報告されている。

 

足底板(D

相反する報告が見られるため、推薦事項は特になし。

 

テーピング(F)

クリニシャンは、痛みを低下させたり、機能的パフォーマンスを改善させるために伸張性テープを使うべきではない。

クリニシャンは、アキレス腱へのストレス(ストレイン)を低下させるため、または足部の形態を変化させるために硬めのテープを使ってもよいかもしれない。

 

低レベルレーザー治療(D

相反するエビデンスが存在するため、低レベルレーザー治療(Low Level Laser Theray)の使用に対する推薦事項はない。

 

イオントフォレシス(IONTOPHORESIS)(B

クリニシャンはデキサメタゾン(ステロイド系抗炎症剤)を用いたイオン導入(イオントフォレシス)を、痛みの低下や機能向上のために使用すべきである。

 

鍼治療(F

クリニシャンは、3ヶ月以上継続する症状に対して、超音波によるガイドの元におこなう鍼灸治療と伸張性収縮エクササイズを複合的に行うのはよいかもしれない。

 

 

その他の治療に対するまとめ

 

コルチコステロイド注射 

ランダム化比較試験のシステマティックレビューでは、すべての腱障害に対して、コルチコステロイドの投与は、短期的な効果は認められるが、中長期的にはその効果を維持できないと結論づけている。

 

腱の断裂のリスクは低いものの、例えば注射後の痛みや皮下組織の萎縮、皮膚の色素脱失などの他の小さな合併症のリスクは存在する。

 

糖質コルチコステロイドの注射とエクササイズの組み合わせ、もしくはエクササイズのみの治療を受けた場合、6ヶ月後には両者ともよい結果が得られた。

 

多量のコルチコステロイド投与と伸張性収縮エクササイズを合わせて受けた患者は、エクササイズだけ受けた患者よりもVISA−Aの改善ポイントが高かった。

 

衝撃波治療

衝撃波治療は、伸張性収縮エクササイズとともに慢性的なアキレス腱障害の患者に用いられた場合、痛みと機能、VISA-Aのスコアが改善したと、あるシステマティックレビューでは報告されている。

 

メタ解析をおこなったものでは、衝撃波治療の効果を認められなかった。

 

PRP治療

多くのシステマティックレビューでは、PRP注射の使用を支持していない高い質のエビデンスが存在する。

 

 

実際に何をしたらよいのか、エクササイズ以外ではおわかりになったと思います。アキレス腱障害でお困りの場合はいつでもご相談ください。

 


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