足の甲の痛みは特に注意!ーリスフラン関節の怪我

2018年09月24日(月)11:22 AM

リスフラン関節とは

 

足部の怪我の中でも、特に注意が必要な怪我のひとつがリスフラン関節の怪我です。リスフラン関節とは足根中足関節のことで、比較的しっかりとした中足部と比較的動きのある中足骨の間になります。

 

 

第2中足骨は内側と外側の楔状骨にはさまれてほぞ状となっていて、大事な要となっています。第2第3中足骨の間、中央と外側楔状骨の間は非常にしっかりとしていて、歩行時の効果的なレバーアームとなります。最後の蹴り出し(踵が上がる時)に力強く蹴る助けとなります。

 

 

この関節は歩行にとって非常に重要な場所なので靭帯も多数ついていますが、第1中足骨と第2中足骨の間と内側楔状骨と中央楔状骨の間の靭帯がなく、ここがウィークポイントになっています。ただ内側楔状骨と第2中足骨の間の靭帯はあるようです。1cmほどの長さと0.5cmほどの幅で一番長く強い靭帯で、全体的な安定性を担っていると考えられています。

 

 

足部の甲側の靭帯はリスフラン靭帯の3分の1の強度しなかなく、他の底側靭帯よりも弱いようです。

 

 

どんな時に起こりやすいか

 

この関節の怪我は交通事故などの大きな力がかかった時に起こることもありますが、スポーツの場面では踏ん張ったり、ひねったりした時など、比較的弱い力でも起こることがあります。例えば、ラグビー選手がタックルを受けてのしかかられたり、足をひねられたりした時などです。また足首を過剰に伸ばした(底屈)した時にも甲側の靭帯を痛める可能性があります。たとえばバレエダンサーなどに起きる時があるようです。

 

ハイアーチはご用心

 

面白いと思った論文(2)の中に、ハイアーチの人がリスフラン関節の怪我になりやすいというものがありました。ハイアーチの定義は内側から見て第1中足骨と距骨がつくる角度が5度以上ということです。

 

 

ハイアーチの人は通常硬い足の人が多いのでなりにくいかと思っていましたが、やはり角度があるからなりやすいのですね。

 

 

怪我の分類

 

どんな怪我にも程度というものがありますが、リスフラン関節の怪我には分類があります。

 

ステージ1とは、「患者はスポーツなどに参加できずリスフラン関節にも痛みがあり、荷重位でのレントゲンでは関節の開きなどは見られないものの、骨スキャンでは陽性である」というものです。

 

ステージ2は、「1mmから5mmまでの開きが荷重位でのレントゲン(前後)でわかるもので、内側アーチは外側からのレントゲンでは下がっていない」というものです。

 

ステージ3は、「荷重位でのレントゲンで5mm以上の開きがあるのがわかり、外側からの撮像で内側アーチが下がり、第5中足骨と内側楔状骨の距離が減っている」というものです。

参考文献1より転載

 

弱い力での怪我についてはなかなか判断が難しいようです。レントゲンの他にCTやMRI検査もありますが、MRIはリスフラン関節のステージ1の怪我があれば関節の炎症があるかないかすぐにわかるので、とても有効なようです。

 

 

怪我が起きたあとのマネージメント

 

ステージ1の怪我の場合、手術はしないでもよいようです。非荷重位で4~6週間、もしくは装具使用であれば荷重位でもよい結果が得られるようです。その他の研究者たちは、最初の2週間は非荷重位で固定、その後検査をして開きがない、痛みがないことを確認してから徐々に痛みのない範囲で活動を始めてもよいとしています。

 

 

開きが2mm以上の場合で手術をせずに保存療法とした場合は、あまりよい結果が得られなかったようです。2mmでもかなりの開きなので、その場合は、特にエリートアスリートであれば、手術をしたほうがよいと言われています。

 

 

個人的には、硬いシェルでできた足底板の使用はマストかなと思います。歩けばそのぶんだけリスフラン関節にストレスがかかるわけですし、ちゃんと治らないと必ずパフォーマンスに影響がでるからです。

 

 

また関節のモビリゼーションも重要だと感じています。どこかの関節がちゃんと動かなければ、どこか動くところにストレスが集まります。怪我をした靭帯がしっかりと回復してきた時であれば多少は問題ないかもしれませんが、回復期には、関節全体の可動性特に重要だと思います。

 

 

ガーディアンズにリスフラン関節の治りがよくない選手が紹介で来られますが、関節のモビリゼーションをおこなうと、けっこう楽に感じていただけるようです。もちろん足底板の処方もさせていただきます。

 

 

手術後に気をつけること

 

程度が高い場合は手術となります。手術後に気をつけなければいけないのは、

 

  1. コンパートメント症候群
  2. 神経血管系の怪我
  3. 傷の問題
  4. 深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)

 

などがあるようです。金属を入れるわけなので、長期的にはそこが問題になるケースもあるようです。また不安定性が戻ることもあれば、関節炎になることもあるようです。ただし関節炎はあっても痛みはないこともあるので、その時にならないとはっきりしないようです。

 

 

競技への復帰

 

怪我前と比較すると、かなりの確率で復帰が可能とのことです(3)。活動レベルも同等かそれ以上のようです。ただし、復帰できても多少難ありというのもそこそこあるようです。

 

 

復帰までの期間ですが、術後にトレーニングや試合への復帰は平均で20週から25週というデータもありますが、これは手術方法や程度の問題もあるので必ずというわけではありません。

 

 

アメリカのプロのアメリカンフットボール(NFL)選手に関する研究では、90%以上が約11ヶ月後に復帰したが、パフォーマンスは怪我前と比較すると、統計的には顕著ではないが、下がっているとの報告もあります。レベルが高くなればなるほどキャリアエンディングな怪我ということなのかもしれません。

 

 

まとめ

 

リスフラン関節の怪我はあまり起こらないものなので、選手もATもついつい見過ごしたり、軽く考えてしまうかもしれませんが、足部の機能を考えるととても重要な関節ですので、しっかりと時間をかけて治癒が進むように十分な配慮が必要です。

 

 

参考文献

  1. Eleftheriou KI, Rosenfeld PF. Lisfranc injury in the athlete: evidence supporting management from sprain to fracture dislocation. Foot Ankle Clin. 2013;18:219–236. doi: 10.1016/j.fcl.2013.02.004.
  2. Podolnick, J.D., Donovan, D.S., DeBellis, N. et al. Clin Orthop Relat Res (2017) 475: 1463. https://doi.org/10.1007/s11999-016-5131-6
  3. Clare MP. Lisfranc injuries. Curr Rev Musculoskelet Med. 2017;10(1):81–5.

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