足の甲の痛みが舟状骨の痛みであれば早く対応を!
時々遭遇するケースですが、内側アーチのところの近くが痛いという方がいます。
足首の前に舟状骨という骨があるのですが、実はその骨が疲労骨折をしている、もしくはしかけているというケースがあります。
この舟状骨の内側には後脛骨筋という筋肉が付着していて、その付着部に痛みがある場合は有痛性外脛骨という診断が下る場合があります。
しかしそうではなく、舟状骨そのものが骨折することがあるのです。
Jacobらによれば、これは以前に考えられてたよりも多く、すべての骨折の14-35%ほどになるようです。どんな人がなりやすいかというと、ジャンプ動作が多いアスリートやダンサー、陸上選手など、エリートアスリートが主に挙げられます(1, 2)。私も骨折にまで至らないケースを含めるとけっこう目にしているという印象です。
舟状骨が痛んでくる原因は足部の働きを理解しなくてはなりません。
人が歩く時、踵が地面に接地した直後に内側アーチが内側に倒れるプロネーションという動きがあります。
プロネーション(下の図の右側)では距骨が内転 (内側に向く)して、底屈(下に向く)します。
Human Locomotion (Thomas Michaud, DC) Newton Biomechanics 2014から引用
距骨の前側の頭は丸く凸状になっており、舟状骨は受け皿のように凹状になっています。
この時に距骨の前に位置する舟状骨が連動して動いてくれます。
しかしこの関節がなんらかの理由でうまく動いてくれないと、舟状骨は距骨に押されてしまい、どこかにストレスがかかってしまいます。
これが舟状骨の疲労骨折の原因と思われます。
疲労骨折と診断された場合はギプス固定で松葉杖というのが一番早く治るようです。体重がかかる足部の中でも大事な関節ですから、これが一番だとわたしも思います。今のところのゴールドスタンダードは、保存で手術せずに治癒を目指すことのようです。だいたい6-8週間のギプス固定と松葉杖のあとに段階的なリハビリとなるようです(3、4)。
手術の場合は最小侵襲でのスクリューによる固定手術で、ギプス固定なしですぐに荷重を許される方法もあるようです。また保存で荷重禁止と手術とを比較した場合では大きな差はないようです(1、4)。
一方、保存で荷重制限程度のプロトコルもあるようですが、これはあまりうまくいっていないようです。
論文(5)によると、手術後や治癒後のフォローアップをすると、痛みや違和感が残ることも報告されています。これは骨折が起こりやすい真ん中1/3のところが血液供給があまりされていないという事実と関連があるのかもしれません。診断しにくい、見つけにくいことを考えると、骨折に至る前にどれだけ防げるかですね。
私が考える対策としては、まずは足底をしっかりと支える硬めの足底板を使用することです。足部には下向きの大きな力がかかるので、それを支えられないとなりません。市販の柔らかいインソールでは十分な高さも硬さもないので、ほとんど意味をなさない可能性が高いです。完全にオーダーで作製されることをお勧めします。
次に大切なことは立ち姿の修正です。立った時にお腹が前に出ている状態では、重心は前に移動してしまい、足部には余計なストレスがかかってしまいます。これを正すには体幹部のトレーニングが必要です。
ガーディアンズでは足底板(インソール)も体幹部のトレーニングも両方とも指導しています。足部にとって両方ともが必要だからです。
なかなか引かない足部の痛みには足底板(インソール)が必要なことが多いです。足でお悩みの方は一度ご相談ください。
1. Jacob KM, Paterson RS. Navicular stress fractures treated with minimally invasive fixation. Indian J Orthop. 2013;47(6):598–601. doi: 10.4103/0019-5413.121589.
2. Bennell KL, Malcolm SA, Thomas SA, Wark JD, Brukner PD. The incidence and distribution of stress fractures in competitive track and field athletes. A twelve-month prospective study. Am J Sports Med. 1996;24:211–7.
3. Torg JS, Moyer J, Gaughan JP, et al. Management of tarsal navicular stress fractures: conservative versus surgical treatment: a meta-analysis. Am J Sports Med 2010;38:1048–53
4.Potter NJ, Brukner PD, Makdissi M, et al. Navicular stress fractures: outcomes of surgical and conservative management. Br J Sports Med 2006;40:692–5
5. Robinson M, Fulcher M. Delayed healing of a navicular stress fracture, following limited weight-bearing activity. BMJ Case Rep. 2014;2014.